1993年から続けてきたギターキットの製作が先頃(2000年)完成した。 キットはマーチン社の OOO-28 モデルである。 これはマーチンギターフリークのK氏の呼び掛けでマーチン社から直接共同購入したものだ。 製作には7年近くを費やしているが、実は製作の難所で放っておいただけのことである。
写真や文章を引用される際には出典を必ず明記してください。
キットを開封したところ。緩衝材は古新聞をシュレッダーにかけたもの。
途方に暮れるオーナー。当初は半完成品を購入しようとしていたのだが、
出荷できないとのことでこのフルキットとなった。
各部品は大雑把に成形されているものの見事にバラバラである。 胴元のK氏の話では材料は基本的に市販モデルと同じであり、良質なものが選ばれているとのこと。 主要部材は合板ではなく単板である。高級品の証しであるが、取り扱いには注意が必要。
サイド材。ローズウッド単板をアイロンで波型に整形してある。
ボディはさっさと作らないと復元してしまうので早めに製作すべし。
バック材。ローズウッド単板。二枚に分割されているものを中央の棒(ヘリンボーン状の積層材)を挟んで接着する。
鉛筆の線で外形とブレイシング材(添木)を接着する位置が描かれている。
つまり、これは裏側である。
トップ材。スプルース単板。あらかじめブックマッチ接合されサウンドホールが開けられている。
鉛筆の線はバック同様。
写真では見えないが表側にはサウンドホール周囲の飾り(Rosette)があらかじめ入っている。
部品の接着には木工用ボンドを使う。工程ごとに十分乾燥させる。 はみ出した個所は乾燥しないうちに濡れ布巾で拭き取る。 ナットのみ瞬間接着材を使用(叩いて外せる)。
ボディサイドの接着。梱包材で作った治具に填め込んでいる。
治具は梱包に使われていた厚手のダンボールをボディの外形に合わせて切り抜いたもの。
これがないとアイロン整形してあるサイドの形が変わってしまうし、そもそも形にならない。
合板などを使用したほうが良いのは言うまでもないが、これでもなんとかなる。
バックとトップの接合面となるリボン材を接着。洗濯挟みでクランプ。
ほんの少しだけサイド材からはみ出すようにしておいて後で削る。
エンドブロックの余分の切り落としとバインディング接着。バインディングの
入る部分をナイフと彫刻刀で削り落として接着。中央の部材と両脇の細い白黒
の部材は別になっている。エンドピン用の穴も開ける。
トップ裏面のブレイシング材を接着。サウンドホール周囲の部材はキットに含
まれていない。色が違って見えるのははみ出した接着材を濡れ布巾で拭き取っ
た直後だから。
トップ裏面のブレイシングの端部にテーパーを付けているところ。
これが音質に大きく影響するらしい。
思い切ったスキャロップ加工をすると良い音になるという説もあるが、
強度の不安があるので控え目にとどめておいた。
バック接合部の補強材を接着。ブックマッチ接合の時にしておいてもよい。
バックを外形に沿って大雑把に切断。サイドに接着後でも構わないと思う。
バックのブレイシング材を接着。トップと違って平面ではないので圧着がちょいと厄介。
バックのブレイシング材を全て接着したところ。トップと同様テーパー処理をおこなう。
ボディサイドの内側に張り付ける補強板とそれを張り付けている様子。
これは桧棒でキットには含まれていない。単板なので割れの心配があるため。
リボンにブレイシングの逃げを作った。
サイドまで削ってしまったのは大失敗。
サイドとバックの接合の様子。
後で気付いたのだが、バックは曲面になるのでトップを先に接合するほうが良いと思う。
サイドとバックを接着した後でバックのはみ出した部分を切り落としている。
ブレイシングがはみ出しているのはブレイシングの逃げのつもりで失敗したところ。
バインディングで隠れると思っていた。
バック - サイドのバインディング用の溝を加工する。ケビキとナイフ、
ハンドルータを使って加工したが、やはりきちんとしたルータが無いと辛いところ。
プラスチックのバインディング材を張り付けて行く。
白いものと、同じ幅で白黒2層のものの2枚。
張り付ける端からマスキングテープで留めて行く。
トップ - サイドのバインディング用の溝を加工する。
こちらは白黒2層、白黒白3層の2枚からなり、しかも幅が違うので段の付いた溝を掘らなくてはならない。
トップ側が平面になりにくいのではみ出すくらいにしておいて後で削るのが良いと思う。
ネックとボディのジョイント部(ダブテイル)を調整して仮組み。
なるべく隙間ができず、なおかつ削り過ぎないように注意する。
ネックの成形をある程度済ませてからのほうがよい。
トップにトラスロッドが収まる穴を開ける。ブレイシングの穴はあらかじめ開けておくこと。
ボディが一通りできたところ。マスキングテープを剥がした跡が見える。
マスキングに強力な接着テープを使うと後処理が大変。
ネックを大雑把に成形したところ。最初はかなり太いので思い切って削ってゆく。
ヘッド形状、ヘッド表面、指板接合面以外は荒い成型がされているだけだ。
断面形状に合わせた冶具を用意しておくと便利。
他にも言えるがリファレンスとなるギターがあると良い。
指板の余分を切り落として主要部品を並べてみたところ。
ネックのマスキングテープは指板幅の目安とすると同時に角の保護。
ヘッドストックにマシーン用の穴を開ける。穴の位置は適当かつ慎重に決める。
ネックを接合するためにクランプしている。
ジョイントは接合面を一致させつつ角度を調整するのが難しい。
素人細工ではどうしても若干の隙間ができてしまうので、
シムを挟んだり接着剤(木工用ボンド)に木紛を混ぜたりしてみた。
接合されたネックとボディ。テンションロッドが入る溝が見える。
指板の接合面とボディの表板は平らになる。
あるいはネックに取付角があるので若干沈ませてボディの方を削って平面にするのがよいかもしれない。
取り付け角はほとんど0にしてある。
指板を接着するためにクランプしているところ。
クランプ面が曲面になるので古雑誌を挟み、さらに均一に力がかかるようにその上に板をおいてクランプする。
本来ならはキチンとした治具を用意すべきだろう。ボディにかかる部分のクランプにも注意。
指板の下には薄板を挟んでテンションロッドが仕込まれている。
このロッド周囲を接着剤で固めるべきか悩んだが、テンションをかけたときに変な力がかかるかと考えて、そうしないことに決めた。
しかし強度の面からは接着したほうがよいと思う。
接着の済んだ指板。あとで思えばフレットは先に打っておくべきだった。
指板横にポジションマークとなるインレイを施す。
写真では見えにくいと思うが、穴に白い樹脂棒を差し込んでいる。
この後でナイフで切り取ると綺麗に仕上がる。
指板表面のマークは省略。サイドにだけあれば演奏には差し支えないのだ。
打ち込んだフレットのはみ出しを鑢でけずっているところ。
フレットは断面がT字状の長いままで提供されているので、指板より若干長めに切ってプラスチックハンマーで打ち込む。
あらかじめ指板にフレット溝は彫られているが、固いエボニー材に真直ぐに打つのはなかなか難しい。
フレットは切断時にヘンに曲がりやすく、そうなるとますます真直ぐに打ち込みにくくなる。
長めに切るか、あるいは長いまま打って後で切るのがよい。
また、打ち込みのときに傾いてしまうと指板を破損することにもなる。
これで一度失敗した後に、溝を水で湿らせから打ち込みをおこなうようにした。
多少はマシなようである。
フレットの打ち込みは指板を接着する前におこなうほうがよい。
これを後にすると打ち込み自体が不安定だし、ボディにかかった部分の削り落としが困難になる。
更には長さはきちんと合わせて切ってから打ち込むのがよい。
このとき、指板に打ち込まれる部分の両端を予め切り落としておけば完成後に指板が乾燥などで縮小した場合でも演奏時の引っかかりが少なくなる。
指板を接着後にフレットを打ったため、サイドにひびが入ったので補修している。
内側に補強板を貼り、クランプでひびを広がらないようにしておいて瞬間接着剤をひびの箇所に流し込む。
ラッカーのみで塗装する。塗って乾燥、サンドペーパーがけを何度かくり返す。
一度にあまり厚塗りしない。市販品のようにまるっきりのつるつるにするつもりもない。
音のためには薄いほうがよいし、ある程度の表面保護ができればよい。
ラッカーは楽器用にも使用される高級品、ネオクリヤー。北海道帯広市の斎藤塗料(0155-25-5151)で扱っている。
ここではヴァイオリンの名器、ストラディヴァリの修復に使用される塗料も供給しているということで、
「ネオクリヤー」はマーチンラッカーよりも品質がよいと言っていた。
冬の間、ベランダでの塗装作業ができなかったのを 5 月頃から再開。コンパウンドで磨きあげたところ。
バフがけすればピカピカになるだろうが、こんなものでしょう。バックの写真にムラが見えるのは写り込み。
塗装ムラではありません。左右非対称に見えるのも撮影角度のせい。
モノホンのマーチン同様、ブリッジの接着は塗装後におこなうこととした。
まず、スケールを計って位置決めをする。12フレット位置の2倍に+αしなければならない。
手元のアストリアス(ec-pro)を実測して参考にする。1弦のブリッジ駒位置でほぼ等距離となっている。
ブリッジとボディエンドのマスキングテープは横方向の位置決め指標。
位置が決まったらブリッジ周囲をマスキング。塗装剥離剤を塗ってヘラでラッカーをこそげ落とす。
見た目よりも塗装が薄いのですぐに剥がれるのはいいが、傷もつきやすい。
スケール位置は問題なかったが、横方向の位置が 1mm ほど低音弦側にずれていた。逆よりは良かったかな。
ここまでくればもう一息。ブリッジの駒を削って溝に合わせる。高さの調整は後でおこなう。
ブリッジの駒高さは大体ブリッジのカーブに合わせて削ればよい。更に角を落としてガイド溝をほんの少し削る。
エンドピンの穴はそのままでは小さいのでテーパーリーマで拡げるが、大きくなり過ぎないように注意。
マシーンの取付。穴開け済みなので、ネジ止めするだけ。
ナットの整形。溝切り。いわゆる目立て用鑢でできないこともないが、専用工具を購入。
セットで一万円近くもするので、この部分だけはどこかの工房にでも依頼したほうが安上がりかも知れない。
ナットの溝はヘッド側を深めにして、弦がボディ側でしっかり接するようにする。
ピックガードと弦を張って完成。いやぁ、長い道程でした。
フレットのわずかな段差でビリつきが出る箇所があるので追々微調整をしてゆこう。
ネックが太めなのも気になるのでこれも。
今回の製作においては簡単に入手できる工具だけを使い、特殊な工具や治具はナットの溝切りのための鑢くらいです。 まぁ、それでもなんとか完成することができました。結構どうにでもなるものです。 音は十分以上に満足の行くものです。 楽器に対する理解も深まりますので興味のある方はトライしてみては如何でしょう。 質問に答えられる程のノウハウはありませんが、御意見、御感想をお寄せいただければ幸いです。
ボディサイドとバックの材をマホガニーと書いていましたが、ローズウッドの誤りでした。 一般的な OOO-28 の仕様と同一な筈です。
Email:masato at bird.email.ne.jp