Thu 11/07, 2002

図書館の存在意義 [Books ]

今夜の NHK の番組「クローズアップ現代」で、かねてから気になっていた現代の図書館の在り方について取り上げられていた。ちなみに国谷さんは知性を感じさせる数少ないキャスターの一人で非常に好感が持てる。

  • 年間の書籍売上8億冊に対し、図書館での貸し出しは延べ5億冊
  • リクエスト制度によって利用者の希望を反映した結果、蔵書が新刊のベストセラーに集中。
    例えば模倣犯(宮部みゆき)の延べ貸し出し数 20 万冊となっており、実質的に無料貸し本屋化し、作家の権利の侵害となっている。
  • 財政難から蔵書のバランスを取るのが困難で、また貸し出し冊数によって評価される。
  • 有能な司書が不足し、多様な要望に応えられない。

現状として以上のような事が紹介された。しかし、この数値は異常だ。作家や出版社が異議を唱えるのはもっともである。そして、これからの図書館の在り方として次のような提言がなされた。

  • レンタル CD、VIDEO 同様に新刊の一定の貸し出し禁止期間を設定する。
  • 公共貸与権利によるの作家への保証制度の採用(海外での例がある)。
  • 専門性への特化(神奈川県立図書館などの例)。
  • 他の館とのネットワークによる分業化
  • 情報発信基地、知的インフラとしての図書館への変革。
私もこれに付け加えてみよう。
  • 貸し出しの有料化。あるいは民営化。
  • 献本の受け入れ。古本の購入。

実は私はかなり本を購入している部類であるが図書館は利用していない。古書店は利用するし、他人の触った本が嫌だという訳ではないが、図書館の古めの本は傷みが激しい。公共道徳の欠如の顕れだろう。それはともかく、専門書はほとんど期待できないしベストセラーはあまり読まない性質だ。それは今時の書店も同様で、規模の大小問わず在庫は似たり寄ったりである。一番困るのは数年前に発行された書籍の入手の困難さだ。しばらく図書館には出かけていないが、ずっと探しているあの本があったなら見直してもいいかもしれない。

[2003.09.01]
この問題についてはgoogle あたりで「図書館 無料貸本屋」などのキーワードで検索すると様々な意見を見つけることができる。

Posted by masato at 10:29 PM
コメント

最近、図書館の貸出が本の販売に影響しているとの議論があるが、これは全くの間違いである。
私は横浜市図書館に勤務しているが、横浜市での試算でもベストセラーでも1%以下である。その他の売れない本については、関係ない。
現在、権利者と図書館が全国調査をしているが、その結果は恐らく1%以下となるだろう。
全体については、「出版ニュース」8月中旬号に書いたので、お読みいただければ幸いです。
あるいは、添付ファイルで送りしたいのですが、送るにはどうしたらよいでしょうか。

Posted by: 指田文夫 at 08/24, 2003 08:45 PM

指田文夫様、コメントありがとうございます。なかなかに気になる調査結果ですね。実情はともかくとして、私は昨今の行き過ぎた感のある知的所有権の保護やメディアによって扱いの違う法に疑問を抱くと同時に、図書館の在り方も変えて行くべきだろうと思う者です。

なお、私へのメールは masato@bird.email.ne.jp にお送りください。web 上にあれば URL を教えていただけるだけで結構です。

ところで、図書館とは別にブックオフのような新古書店に対する意見も様々ですね。

[ブックオフに欲しい本はない]
http://artifact-jp.com/mt/archives/200308/bookoff.html

Posted by: masato at 08/24, 2003 09:23 PM

ブックオフの不完全さは、ある意味で当然で、何故ならブックオフは、実は貸本屋であるからだ。ブックオフが急成長したのは、貸本屋がほとんどなくなったからで、この問題は本質的には貸本屋を復活させるしかない。ブックオフは読者からの買取であるため、利用者の需要に合せた品揃えはできていない。
図書館の無料貸本屋問題も同じである。
要は、本を借りて読みたいという需要に応え、貸本屋を増やせばいいのである。
今回、作家等が「本の貸与権」を求めて声明を出したが、方向性は正しい。それを、「公共貸与権」にまで持っていこうというのは完全な間違いだが。

Posted by: 指田文夫 at 08/30, 2003 08:23 AM

図書館問題、いわゆる「無料貸本屋問題」の解決は簡単である。
図書館が無料貸本屋化しているのが問題なら、有料貸本屋を増やして、そこに需要を誘導すればよいだけである。それをあれこれの規制をするなど、この規制緩和の世の中に、時代錯誤の官僚統制である。
「公共貸与権」など、図書館の貸出による本の販売への被害などはないのだから、現在も将来も必要ない。やたらに「公共貸与権」を言っている三田誠広や猪瀬直樹は本当に必要だと思っているのかしら、信じられない。
新刊の貸出猶予制も、ビデオやCDとは販売点数(本の方が一桁以上多い)も販売戦略(ビデオ等は短期大量販売で、本は長期に売るのが原則)も全く異なるのだから、同様に考えること自体がおかしい。本屋の店頭に本が短期しかないとしても、それは本の流通の問題で、図書館と何の関係もない。

Posted by: 指田文夫 at 08/30, 2003 10:44 AM

指田さんとは私信で意見を交わしていたのですが、多くの方の目に触れたほうが良いだろうと言うことで、改めてコメントとしてポストしていただきました。送っていただいた「出版ニュース」の記事は版権の関係上、ここで公開することはできませんので、興味のある方は図書館で閲覧されるなりしていただきたいと思います。

私はこの問題についてちょっと斜めからみた意見を持っています。それは図書館の貸し出し有料化ということです。これは現在では法制上無理ということなのですが、まぁ非当事者の戯言あるいは思考実験ということで。ここでの有償化の提言は著作権者に還元することを目的とするものではなく、サービスの受益者負担(税金以外の)とサービス向上のためです。それに昨今の公共のものはタダで粗雑に扱ってもいいという風潮に抵抗したいと言うことでもあります。指田さんは記事の中で、「市民はタダだから借りるのではない。家に本を置きたくないから借りるのだ」と述べられていますが、それなら有償にしたらどうなるのだろうという興味もあります。

Posted by: masato at 08/31, 2003 11:24 PM

図書館の有償制について。
それは私が昨年から提言しているように、レンタル・ブックを進めれば良いことである。公共の図書館での貸出をいきなり有料にせよ、といのは無理がある、と言うより現実的には全く不可能。法改正しないと出来ない、ということは出来ないのだ。
それより、民間のレンタル・ブックを促進し有料で貸出し、著作権法を改正してそこから貸与料を取り、著作権者に払うようにすれば、すべて解決できることだ。実に簡単である。
よく考えてもらいたい。

Posted by: 指田文夫 at 09/01, 2003 08:16 PM

最初の全国の貸出数はともかくとして、『模倣犯』の貸出が20万冊という数字は、相当に疑ってみる必要がある。
また、貸出実績で図書館が評価されるというのも眉唾だ。一体誰がそんなことを言っているのか。まるで「火曜サスペンス劇場」みたいな役所である。どこの市長もその程度で、ああだこうだ言うレベルではない。
一体どういうやリ方で出した数字なのか。
恐らく、かなり少ないサンプルを基に作った数字だと思われる。
先日三田誠広の『図書館への私の提言』が出て読んだが、そうした図書館の貸出による販売への被害の実証が全くなく、ただ
売れなくなるのは確実と繰り返すばかりだった。
全くひどい本である。是非読まれるといい。

Posted by: 指田文夫 at 09/09, 2003 10:48 PM
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