Tue 08/12, 2003

妖怪小説 [Books ]

妖怪小説の新刊を二冊

  • 京極夏彦・陰摩羅鬼の瑕
  • 大塚英二・くもはち

ネタ晴らしになるかもしれないから、続きを読まれる方はそのつもりで。

今や押しも押されぬ流行作家である京極夏彦氏の新刊、「陰摩羅鬼の瑕」。この物語の登場人物である「京極堂」こと中禅寺秋彦の言葉の通り、不思議なものは何もない。事件の犯人もその動機(というのは不適切か)も物語の冒頭からはっきりしている。しかし、それはこの小説の魅力を損ねるものではない。朝靄が晴れるように、徐々に視界が明瞭になっていくように文を読み進められる。トリックを楽しむようなミステリではないのだ。この作品は京極堂シリーズではもっとも読みやすい部類ではあるだろうが、それにしても軽薄短小が好まれる御時世にこのような頁数の多い、難しい言葉が多数散りばめられた小説がベストセラーになるのは不思議な感じがする。もし、他のシリーズをまだ読んでない方があれば、最近ハードカバーで出た「姑獲鳥の夏」を薦めよう。京極氏の世界を味わうには新書や文庫よりも、このようなきちんとした装丁の本こそ好ましい。ただ、小口に印刷された絵が煩い感じがしないでもない。

こちらもまた技巧派の書き手、大塚英志氏の「くもはち」。くもはちというのは登場人物の名前であるが、これは小泉八雲の名からであるのは明らかだ。平明な文章で軽く読むも深く読むも良い。

Posted by masato at 12:05 AM
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